名画研究会

「なぜこの絵は名画と呼ばれるのか」を追求しています。youtubeチャンネル「Masterpiece Lab.」も更新中。

【後編】クリムト「接吻」が名画と呼ばれる3つの理由 3/3

名画と呼ばれる理由③ 深い精神性

 

「接吻」が名画と呼ばれる三つ目の理由は、絵に込められた深い精神性にあります。

 

この絵のモデルは、クリムトと、クリムトの最愛の女性エミーリエだという説が濃厚です。単純に考えると「愛し合う男女」というシンプルなテーマのように見えます。

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しかし、実はエミーリエとはプラトニックな関係であったと言われています。多くのモデルたちと肉体的な関係を持っていたクリムトがなぜ・・という疑問が浮かびます。


複数の研究者の見解によると、クリムトの中には「エロティックな女性の肉体を愛するクリムト」と「女性を精神的に崇拝するクリムト」が独立して存在していたという可能性が考えられています。

現実において「肉体的愛」と「精神的愛」を一致させることができなかったクリムトは、絵画においてそれを一致させる可能性を見出したと推察されています。

 

クリムトは、肉体的愛と精神的愛が一致した愛のかたちを「接吻」で表現しています。肉体と精神が一致した本来の愛のかたちは、クリムトにとって祈りのような想いであり、「接吻」は深くクリムトの精神と結びついた作品なのです。


男女が描かれてるののが断崖絶壁であるのも、クリムトの中の愛の形が歪(いびつ)であり、危ういものだったからではないでしょうか。

 

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接吻(グスタフ・クリムト/1907-08)

 

以上、クリムト「接吻」が名画と呼ばれる理由3つ、①超現実 ②官能美 ③深い精神性 について解説しました。