【おまけ】「ヴァージナルの前に座る女」には原作がある?フェルメールが参考にした画家とは ~ロンドンナショナルギャラリー展~
■インスピレーションを与えたと考えられる作品が存在
今回ロンドンナショナルギャラリー展で来日するフェルメールの「ヴァージナルの前に座る女」ですが、この絵には構図などを参考にした、ベースとなる作品があることが知られています。それがヘラルト・ドウ作の「クラヴィコードを弾く婦人」です。
絵の醸し出す雰囲気は異なるものの、鍵盤楽器を弾いている女性が視線をこちらに向けている点や、弦楽器が描かれている点、手前に天井から下がる布が描かれている点など、確かにフェルメールの作品と似ています。
ヘラルト・ドウ(「ヘリット・ダウ」と表記される場合も)はフェルメールよりも19歳年上のオランダ人の画家です。ドウはあのレンブラントの最初の弟子としても有名で、巨匠レンブラントのもとで明暗法や精密な描写を習得しました。そんなドウが「クラヴィコードを弾く女」を描いたのが1665年、そしてフェルメールが「ヴァージナルの前に座る女」を描いたのが1672年なので、フェルメールがドウの作品からインスピレーションを受けたという説があるのも納得です。
■あの人気作もドウの作品を参考にしていた?
実はフェルメールのほかの作品でも、ドウの作品と構図が似ている作品があります。それが2018年から2019年にかけて日本で開催された「フェルメール展」の目玉作品でもあった「牛乳を注ぐ女」です。
フェルメールの作品の中でも最も人気の高い作品のひとつですが、実はこちらもドウの作品を参考にしたと言われています。そのドウの作品がこちら。
ドウがこの「料理人」を描いたのが1640年頃、一方フェルメールが「牛乳を注ぐ女」を描いたのが1658~60年頃とされていますので、もしかすると本作を参考に描いたのかもしれません。ただフェルメールの「牛乳を注ぐ女」のほうが遥かに写実的で静謐な雰囲気が感じられますね。
今回はおまけ的な感じで、フェルメールとドウについて書いてみました。そこまで重要な情報ではなかったかもしれませんが、作品の背景として覚えていたら意外と面白いかもしれませんね。
名画研究会