名画研究会

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ゴッホが描いた「ひまわり」だからこその魅力 ~ロンドンナショナルギャラリー展~

ゴッホの絵画は「手紙」が重要

ゴッホの「ひまわり」が何故ここまで我々を魅了するのか、その理由のひとつはゴッホの4歳年下の弟テオとの「手紙」にあります。

                                            

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テオドルス・ファン・ゴッホ(1857~1891)

テオは経済的にも精神的にもゴッホの大きな支えとなっていたのですが、この二人の間で交わされていた「手紙」が数多く残されています。手紙には、ゴッホが何を考え、どのような思いを込めて絵の制作に取り組んでいたかなどが詳細に記されています。例えば、今回のテーマである「ひまわり」を描いた時期にはこのような手紙をテオ宛に書いています。

「黄金を溶かすには十分な加熱が必要だ。この花の色調は、誰でも出せるというものではなく、一人の人間の全力を傾けたエネルギーと注意力が必要だ」

 この手紙を読めば、ゴッホがどれほど「ひまわり」の黄色の色調にこだわっていたのか、そしてどれだけ全身全霊を注いでいたのかを知ることができます。

 

また同じ時期にテオ宛にこのような手紙も書いています。

「僕はゴーガンに新しいものを、彼の影響をうけていないものを見せてやりたい。彼がアルルへ来れば彼の影響を受けるだろうし、僕もそう望んでいる。だが、まさしく僕のものだという独創的なものを見せる前には、彼の影響は受けたくないんだ」

 この手紙からは、ゴッホがゴーガンの到着を心待ちにしながらも、独創的な画家としてゴーガンに認めてられたいという、強い願望を感じ取ることができます。

 

手紙から溢れ出るゴッホの人間味がゴッホの作品の魅力を高めています。実際にゴッホの魅力は描いた絵で半分、残された手紙で半分」と語った日本の評論家もいる程です。

■「書簡集」により評価が高まる

ゴッホの作品が世の中に広まるきっかけとなったのも「手紙」であったと言われています。ゴッホの死後21年たった1911年、ゴッホと手紙のやりとりをしてい画家のベルナールが、またその3年後の1914年には弟テオの妻であったヨハンナがゴッホの手紙をまとめた書簡集を出しました。  

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友人の画家 ベルナール宛の手紙

この書簡集が話題になりました。そして同時期に開かれた展覧会が大盛況となったことをきっかけにゴッホは「ポスト印象派の代表的な画家」としての地位を確立したと言われています。このことからも「手紙」が果たした役割は大きいと言えます。

 

ゴッホ自身が人を惹きつける

「ひまわり」が多くの人を魅了するのは、作品自体の魅力だけが理由ではありません。「手紙」から読み取れるゴッホの情熱や苦悩から溢れ出る人間味がどうしようもなく魅力的で、それがまた人々の心に響くのではないでしょうか。

 

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